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教えて小峯さん!アメリカのエネルギー事情Vol.2

アメリカ国務省主宰の「International Visitor Lseadership Program」に参加してきた調布未来のエネルギー協議会代表の小峯さんに、えねきょうブログ担当のコバヒロがお話を伺うインタビューの第2弾。今回はカリフォルニア州にある地域電力事業者「SMUD」の取り組みについて伺います。

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■アメリカの地域電力事業会社

コバヒロ アメリカのエネルギー事情は、視察前に想定していたものと違ったこともたくさんあったようですが、具体的にはどのような違いがあるのでしょうか。

小峯 アメリカと言うと、経済や利回りが最優先され、特定の電力事業者が大型発電所を所有し、送配電線網も独占していて、ものすごく儲けているというイメージを持っていました。もちろん地域独占的な大規模電力事業者が存在している州もあるようですけれど。今回訪れたカリフォルニア州には、第二次世界大戦前の1923年から市民が株主となった地域電力事業者があると知りました。

コバヒロ 長い歴史を持つ会社ですね!1923年というと90年以上前から!どのような会社なのでしょうか?

小峯 SMUD(Sacramento Municipal Utirity District)。日本語で直訳するとサクラメント地域自治電力とでも訳すのでしょうか。

カリフォルニア州にはPG&E(Pacific Gas and Electric Company)のような古くからある大企業もあるのですが、このSMUDは1946年に当時地域送配電線網を独占していたPG&Eから送配電線網を買い取り、25年以上も前から太陽光発電を導入したり、現在ではSolano地区で102メガワットの風力発電を所有したりしながら、サクラメント郡周辺地区で60万以上の顧客へ電力供給を行っています。そしてこの間ずっと、サクラメント郡周辺地区において、安価で信頼性の高い電力を提供しています。

コバヒロ 歴史があるだけでなく、実績もすごいですね。アメリカが自然エネルギーに関して先進国だということを実感します。

小峯 これまでえねきょうで行ったセミナーでは、ドイツや北欧の市民主導型の地域電力会社、例えばシェーナウ電力のような電力会社を紹介してきましたが、まさか市民が立ち上げた電力会社が、しかも90年も前からアメリカに存在していたとは、大変な驚きでした。
教えて小峯さん!アメリカのエネルギー事情Vol.2


■スマートメーター導入


コバヒロ SMUDでは「スマートメーター」も視察してきたそうですね。そもそも、スマートメーターとは?

小峯 スマートメーターは、デジタルで電力量が検針でき、データ化が可能なメーターのことです。
日本でもこれから順次導入される予定ですが、アメリカでは一足先に導入が進んでいます。しかしながらその普及率は2011年時点で全米22%程度です。それに対し、SMUDが契約している家庭では、60万以上の全顧客に対しスマートメーターの導入が完了しています。

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▲スマートメーター導入の様子。



コバヒロ 60万以上の全顧客にスマートメーターの導入が完了していることは、どれくらいすごいことなのでしょうか?

小峯 各家庭の電力使用量データを把握することが可能となるため、SMUDでは契約者が消費する電力量をリアルタイムで予測し、夏季など電力供給力に対し需要が多過ぎる場合などは、戸別に電力需給抑制(デマンドレスポンス)を要請することができるようになります。
さらに、各家庭の電力消費量が把握できるということは、専門的視野から各家庭に対する日常的な省エネルギーのアドバイス、改善策提示もできるようになり、電力供給量の全体的な削減、設備投資の効率化にも繋げることができるようになります。

コバヒロ なんと効率的!理想的なカタチですね!

■地域エネルギー会社らしい地道な事業

コバヒロ ほかにも、地域でのSMUDの存在感は大きかったそうですが…。

小峯 SMUDでは発電事業や送配電網に関連する大規模プロジェクトばかりを行っているわけではありません。私たちがサクラメント市内で訪れた「Hot Itarian」というイタリア料理のお店では、SMUDが店舗設計から関わることで、エネルギー効率の良い営業を行っていました。

コバヒロ 具体的に、どのような工夫がされているのでしょうか。

小峯 たとえば平屋建物の屋根面の断熱層を厚くしたことや、太陽熱温水器による熱利用、間接照明の多く使うこと、照明のレイアウト変更、エアコンの吹出し方法の変更等です。

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▲左:Hot Itarian店内の様子。 (右)太陽熱温水器。



■食品残渣のバイオマス利用

コバヒロ Hot Itarianでは食品残渣のバイオマス利用もしていたそうですね。

小峯 えねきょうでも昨年事業化について検討した、食品残渣のバイオマス利用も行っていました。調布ではメタン発酵によるガス化で検討しましたが、Hot Itarianでは敷地内に大きなバケツのような器で発酵させ、お店が契約している野菜生産農家に肥料として分けているとのことでした。

教えて小峯さん!アメリカのエネルギー事情Vol.2
▲食品残渣バイオマス利用。右側に停まっているのが生ごみ収集自転車。



小峯 この仕組み自体は日本でも行っている企業が多いですが、Hot Itarianの趣旨に賛同している近隣の飲食店から大きな自転車で生ごみを運んでくるというのは、何ともユニークでエネルギーを楽しんでいるように感じられました。この自転車、荷台が後ろではなく前に付いていましたが、身長170cmの私では漕ぐことができませんでした。

教えて小峯さん!アメリカのエネルギー事情Vol.2
▲荷台部分が前輪についています!



小峯 そして何より、オーナーのお話では、エネルギー効率を上げて経費が下がり、利益が上がった分で料理の単価を下げることができることは、地球にとってもお客様にとっても素晴らしい好循環だと仰っていました。このように、SMUDでは飲食店のエネルギー効率の改善のコンサルティングを行っていて、お店のオーナーにも大変感謝されていましたが、これは今後えねきょうでも参考にできそうな感じがしました。

コバヒロ みんながハッピーになれる、理想的な循環ですね!

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小峯さんの視察ツアーはまだまだ続きます。つい先日も北海道の下川町に木質バイオマスを利用した地域熱供給システム見学に訪れました。こちらもレポートも後日公開予定です。



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